カンボジアにおける教育の現状
カンボジアの教育現場には、解決しなければならない様々な形の問題が存在しています
そのカンボジアの教育現場の状況を理解するために、カンボジアでこれまで起きたこと、そして現在の人々の生活を少しだけ知ってください。
教育基盤崩壊に至る歴史
世界遺産アンコール・ワットがあるカンボジア。
近年は経済成長が続いており、町や人々の様子も年々活気づいてきている。
しかしそのカンボジアでは、およそ35年前に起きたことにより、今でもまだ深刻な問題が多く起きている。
カンボジアでは1970年代からおよそ20年にわたって、内戦が続いた。
その内戦の中、1975年、ポルポト政権が成立。
共産主義を掲げたポル・ポトは、教育は資本主義を教え込む元凶と捉え、それまであった学校を次々に破壊し、教材や本を焼却していった。
それだけではなく、知識のある者は資本主義を生み出す敵として捕らえ、虐殺していった。その数は200~300万人と言われている。
この時、教育を行う教師は徹底的に捉えられ、虐殺されてしまった。
学校、教材だけでなく、教師も失ったことにより、カンボジアの教育基盤は完全に崩壊した。
ポル・ポト政権が失脚した後、生き残った人たちにより教育の立て直しが行われたが、ほとんどの教師を失った事実は、容易に乗り越えられるものではなかった。
教えられる教師がいないから、字が読めるだけの人が教師になった。
算数も国語も社会も理科も知らず、教育のことを何も知らない教師たちが教育を行うしかなかった。
そして、その時の教育を受けた子供たちが、今大人となり、教育を行っている。
現在の教育現場では、このことを背景として様々な問題が生じている。
カンボジアの現在の学校事情
カンボジアの教育制度は日本と同じく6・3・3制で、最初の9年が義務教育となっている。年々就学率は高くなってきているものの、中には働きながら学校へ通う子ども、様々な問題により学校へ通うことのできない子どもがまだまだ多くいる。
小学校については、国内に約7000校ある。
しかし、その中には教師がいないために学校として機能していないところがたくさんあるのが現実である。
教師がいないために学校が機能しない現状は、教員の給料にかかわって生じている。カンボジアでの生活費は、例えばシェムリアップ市で一家5人が一般的な生活をするためには少なくとも月300ドル必要と言われている。
しかし、教員の給料は月およそ40ドルと非常に少ない。そのため、教員は生活のために副業をしなければならない。
農村部の場合、副業の職がないため、教員は副業のある都市部へ流れていっている。そのため、どれだけ政府や外国の援助によって立派な校舎が建っても、そこで教員の生活がなりたたないことから、教員が足りなくなり学校として機能できない状況が生じている。
一方、都市部では教員は副業として学校外で塾を行っている。
カンボジアの学校は午前・午後の二部制である。カンボジアでは教師も同様に2部制で働いている。つまり、午前だけ働く教師と午後だけ働く教師がいる。そのため、午前に学校で教える教師は、午後に塾を行い、午後に学校で授業を行う教師は午前に塾を行っている。その塾では、自分が学校で受け持っているクラス生徒に対して教えており、そこでは学校の勉強の復習ではなく、学校の授業の続きや補習を行っている。
そのため、塾に行かなければ学校の授業についていくことが出来なくなり、塾に通うお金のない子供たちは授業についていけずに、進級することがむずかしくなる。
教員の生活が十分に保障されていないことが、子供たちが平等に教育を受ける機会をも奪っている。
また、教員の給料の問題は、教員の教育活動への意識の低さを生み、それが教育の質の低下までもを引き起こしている。